日本航空(JAL)の入社式といえば、航空業界の注目イベントの一つ。特に伝統となっている「紙飛行機セレモニー」や羽田空港の巨大格納庫で行われる盛大な式典は、就職活動中の学生や航空業界に興味がある方々の間で話題になっています。

2024年4月には過去最多となる約2600名もの新入社員がJALグループに迎えられ、初の女性社長となる鳥取三津子社長のもとで華やかな入社式が執り行われました。コロナ禍での変化や様々な伝統行事、社長の印象的なメッセージなど、JALの入社式には興味深い要素がたくさんあります。
記事のポイント!
- JAL入社式の会場や伝統的なセレモニーの詳細
- 2024年に行われた最新の入社式の様子と鳥取新社長のメッセージ
- コロナ禍による入社式の変化と近年の採用動向
- JALとANAの入社式の違いや特徴
日本航空入社式の特徴と伝統
- JALの入社式は羽田空港の格納庫で行われることが多い
- 紙飛行機セレモニーはJAL入社式の伝統的な行事である
- 過去最多の2600人が参加したJAL入社式2024の様子
- 社長による訓示は安全とお客様を第一とする内容が多い
- 著名人からのビデオメッセージも入社式の特別な瞬間である
- 新入社員代表による宣誓は感動的なスピーチが行われる
JALの入社式は羽田空港の格納庫で行われることが多い
JALの入社式と言えば、その会場選びにも航空会社らしさが表れています。調査の結果、日本航空の入社式は通常、東京・羽田空港にある巨大な格納庫(ハンガー)で実施されることが多いようです。この格納庫は通常、航空機の整備や点検が行われる場所で、普段は一般の人が入ることができない特別な空間です。
この広大な格納庫には実際の航空機が配置され、新入社員たちは自分が働くことになる航空機を間近に見ながら入社式に臨むことができます。2024年の入社式では、前日に到着したばかりのエアバスA350-1000型機の3号機(登録記号JA03WJ)をはじめ、ボーイング787-9型機、737-800型機が新入社員を出迎えていました。
このように実際の航空機が目の前にある環境で入社式を行うことで、新入社員たちは航空業界で働く実感を強く持つことができるでしょう。また、格納庫という特別な場所で行われる入社式は、JALグループの一員になったという誇りや喜びをより一層感じさせる効果もあります。
航空業界ならではのこの会場選択は、新入社員に強い印象を与えるだけでなく、「整備の聖地」とも呼ばれる場所で安全への誓いを立てる意味合いも込められているようです。JALが安全運航を最優先にしている企業文化を、入社の時点から社員に浸透させる狙いもあるのではないでしょうか。
なお、コロナ禍の2020年にはオンラインでの開催を余儀なくされましたが、状況が改善した2021年以降は徐々に格納庫での開催が再開されていきました。JALグループにとって、この格納庫での入社式は単なるセレモニーを超えた意味を持つ大切な伝統となっています。
紙飛行機セレモニーはJAL入社式の伝統的な行事である
JAL入社式の最も印象的な伝統行事と言えば、やはり「紙飛行機セレモニー」でしょう。この独特なセレモニーは、入社式の締めくくりとして行われる恒例の行事となっています。調査によると、新入社員たちは自分の抱負や決意を書いた紙飛行機を一斉に飛ばし、社会人としての新たな門出を象徴的に表現します。
2023年の入社式では「明日の空へ、テイクオフ」というかけ声に合わせて紙飛行機が飛ばされました。このセレモニーには「新たな決意と共に飛び立つ」という深い意味が込められており、航空会社ならではの粋な演出と言えるでしょう。時には、先輩社員からのメッセージが書かれた紙飛行機に、新入社員が自分の想いを書き加えて飛ばすというバリエーションも見られます。
紙飛行機セレモニーは2013年頃から確認されており、再上場後の新生JALの伝統として定着してきたようです。「決意託した紙飛行機がテイクオフ」というフレーズで報道されることも多く、メディアにも注目される場面となっています。
このセレモニーは単なるパフォーマンスではなく、航空業界で働く喜びや夢を形にする大切な儀式です。新入社員たちにとっては、自分の決意を形にして空へ飛ばすことで、これからのキャリアへの希望や覚悟を新たにする機会となっているのでしょう。
また、2023年の入社式では「W-PIT」というJALの社内ベンチャーチームのメンバーが、機内BGMの「I Will Be There with You」とAKB48の「365日の紙飛行機」を演奏して新入社員を歓迎するという演出も行われていました。このような音楽とともに行われる紙飛行機セレモニーは、入社式に華やかさと感動を加える重要な要素となっています。
過去最多の2600人が参加したJAL入社式2024の様子

2024年4月1日に行われたJALグループの入社式は、過去最多となるグループ40社約2600人もの新入社員が集まる盛大なものとなりました。調査によると、この入社式は羽田空港の格納庫で開催され、前日に到着したばかりのA350-1000型機が会場に配置されるという特別な演出も見られました。
この日の入社式は特に注目を集めました。なぜなら、同日付で就任した鳥取三津子新社長による初の入社式だったからです。鳥取社長は日本の航空大手で初の女性社長であり、客室乗務員出身としても初めての社長という画期的な人事となりました。
鳥取社長は入社式で「JALグループを選んでいただいたこと、仲間として加わっていただいたことに感謝の気持ちで一杯」と述べた上で、今後重要なこととして「安全」と「お客様」を強調しました。特に「JALグループの仕事は、どの業務に関わっていても、必ず『安全』につながっている。その先にいらっしゃるお客様の命にもつながっていることを決して忘れないで」と語りかけた言葉は、2024年1月2日に発生したJAL516便の事故を踏まえた重みのあるメッセージでした。
また、この入社式では恒例の紙飛行機セレモニーも行われ、新入社員と鳥取社長が一緒に紙飛行機を飛ばす様子が報道されています。格納庫に集まった2600人もの新入社員が一斉に紙飛行機を飛ばす光景は、かなり壮観だったことでしょう。
2024年の入社式の特徴として、新型コロナウイルスの影響から回復し、航空需要が戻りつつある中での大規模な採用が行われたことが挙げられます。これは航空業界全体が回復基調にあることを示す象徴的な出来事と言えるでしょう。
なお、新入社員を代表しては、JALグランドサービス(JGS)のキンチョウレウィンさん(39)が宣誓を行いました。2006年にミャンマーから留学生として来日し、大学院で学んだキンチョウレウィンさんの「子供のころからの夢であった航空業界で仕事ができること、JALグループで働くことが実現できてうれしい」という言葉は、多くの新入社員の気持ちを代弁するものだったことでしょう。
社長による訓示は安全とお客様を第一とする内容が多い
JAL入社式における社長の訓示は、毎年注目される重要な部分です。調査の結果、歴代の社長たちはいずれも「安全運航」と「お客様第一」を強調するメッセージを新入社員に送っていることがわかりました。
2024年の入社式で鳥取三津子社長は「今年こそは明るい年の始まりをと期待していたが、元日に能登半島地震、2日に516便の事故が発生し、心が痛んだ。この教訓を生かしていくために、人の命の大切さ、安全運航あってのエアライングループであることを皆さんと一緒に胸に刻みたい」と語りました。安全に対する強い想いと反省、そして新入社員とともに安全文化を築いていく決意が伝わってくる言葉です。
2023年の入社式では赤坂祐二社長が「航空の真のプロフェッショナルになって欲しい。安全運航は多くの分野のプロフェッショナルが、それぞれの役割を果たすことで成り立っている。決して一人の力ではできない、同時に一人でも欠けてはできない仕事だ」と述べています。チームワークの大切さと一人ひとりの責任の重さを説いた訓示でした。
また、2018年の入社式で赤坂社長は「安全は全員で守っていくもの」と強調し、2019年には「真のプロを目指して」というメッセージを送っています。さらに2017年には植木義晴社長(当時)が「成長というものを誤解しないで」と新入社員に語りかけました。
興味深いのは、2017年の下期入社式で植木社長が「つぶれたのではなく、つぶした会社」と述べていることです。これは2010年に経営破綻したJALの過去を直視し、その教訓を忘れないよう促すメッセージだったと考えられます。
社長の訓示は、その時々の航空業界や企業が置かれた状況を反映しながらも、常に安全とお客様を中心に据えた内容となっています。新入社員にとっては、JALグループの社員として何を大切にすべきかを学ぶ最初の機会であり、企業文化や価値観を理解する重要な場となっているようです。
著名人からのビデオメッセージも入社式の特別な瞬間である
JALの入社式では、著名人からのビデオメッセージやゲスト出演が行われることもあり、新入社員にとって特別な思い出となっています。調査によると、2024年の入社式では、JALがスポンサーとなっているロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手から「どんな時も前向きに明るく元気な未来を目指して頑張りましょう」というビデオメッセージが送られました。
同じく野球界からのゲストとしては、2016年の入社式では元メジャーリーガーの松井秀喜氏が登場し、「練習が苦にならなかった」と新入社員を激励したことが報じられています。これらの著名人からのメッセージは、新入社員のモチベーション向上に大きく貢献していることでしょう。
JALは2023年からスポーツ選手の採用も行っており、2023年度には「アスリート社員」として、陸上競技・走り幅跳びの高良彩花選手、パラ陸上・走り幅跳びの鈴木雄大選手、スキー競技・ノルディック複合の谷地宙選手の3名が採用されています。パラスポーツやウィンタースポーツの選手が入社したのは初めてだったとのことです。
このようなアスリート社員の採用やスポーツ界との連携は、JALの企業イメージ向上や社会貢献活動の一環として位置づけられているのかもしれません。同時に、トップアスリートの持つ集中力や向上心、チームワークの精神などは、航空業界で働く上でも重要な要素であり、新入社員にとって良いロールモデルとなることが期待されています。
著名人からのメッセージは単なる演出に留まらず、「どんな時も前向きに」という大谷選手の言葉のように、航空業界の厳しさや変化に対応していく心構えを新入社員に伝える役割も果たしています。特に2024年の入社式は能登半島地震やJAL516便の事故という厳しいスタートの年だっただけに、このようなエールは新入社員の心に響くものだったでしょう。
新入社員代表による宣誓は感動的なスピーチが行われる
JAL入社式のもう一つの重要な要素が、新入社員代表による宣誓です。調査によると、毎年選ばれた代表者が全新入社員の決意と抱負を代弁し、感動的なスピーチを行っています。
2024年の入社式では、JALグランドサービス(JGS)のキンチョウレウィンさん(39)が代表として宣誓しました。2006年にミャンマーから留学生として来日し、大学院で学んだキンチョウレウィンさんは「子供のころからの夢であった航空業界で仕事ができること、JALグループで働くことが実現できてうれしい。母国と日本の経済発展に貢献したい」と誓いました。国際色豊かな人材がJALグループに加わり、多様性を高めていることがうかがえます。
2023年の入社式では、沖縄を拠点とする日本トランスオーシャン航空(JTA)の客室乗務員、上間涼音さんが宣誓を行いました。上間さんは「私の学生生活においても、我慢を強いられ、思い描いていたものではなく、悩み迷う日々もありました。しかし、その厳しい環境の中でも『人と人との繋がりの大切さ』『変化する環境の中で挑戦していくことの大切さ』を学ぶ事が出来ました」と語りかけました。コロナ禍での困難を乗り越えてきた世代ならではの力強いメッセージです。
このような宣誓は、代表者個人の決意表明であると同時に、同期全員の想いを集約したものでもあります。そのため、社長から直接宣誓書を受け取るという形式で行われることが多く、会場の新入社員全員が自分事として感じられる重要な場面となっています。
また、宣誓後には代表者へのインタビューが行われることもあります。2023年には新入社員の三浦雄咲さん(22)が「男性客室乗務員が少ないことは重々承知しており、目立つ存在だと思うが、目立つことをプラスに捉えて、より多くのお客様と積極的に関わることで、より思い出深い、覚えていただける働き方が出来ると思い、JALを選んだ」と語っています。
宣誓の内容からは、その時代の社会状況や新入社員たちの価値観を読み取ることができ、人材採用の傾向などを知る手がかりにもなっています。

日本航空入社式の変遷と最新情報
- コロナ禍でJAL入社式はオンライン開催に変更された経緯がある
- JALが採用再開した2023年からは格納庫での大規模入社式が復活した
- 鳥取三津子社長は初の女性社長として2024年の入社式を主宰した
- JAL入社式とANA入社式の類似点と相違点
- 10月にも中途採用者向けの下期入社式が開催されることがある
- グループ会社社員も含めた一体感のある入社式が特徴である
- まとめ:日本航空入社式の伝統と進化、これからの展望
コロナ禍でJAL入社式はオンライン開催に変更された経緯がある
新型コロナウイルスの感染拡大は、航空業界に大きな打撃を与えただけでなく、JALの入社式の形式にも大きな変化をもたらしました。調査の結果、2020年の入社式は感染拡大防止のためにオンラインでの開催に切り替えられたことがわかりました。
2020年4月1日に行われたオンライン入社式では、赤坂祐二社長(当時)が「イベントリスクは必ず終わりがある」と新入社員を励ましていました。コロナ禍の真っ只中でありながらも、将来への希望を持ち続けるよう促すメッセージだったと言えるでしょう。この時期、航空需要は激減し、JALを含む多くの航空会社が厳しい経営状況に陥っていました。
その後、2021年には状況の改善とともに、4月の上期入社式は格納庫での開催が再開されました。ただし、完全な形での再開ではなく、感染対策を施した上での限定的な開催だったと考えられます。2022年度は4月と下期となる10月のどちらも格納庫で入社式が開催されるようになり、徐々に通常の形に戻っていきました。
特筆すべきは、JALがコロナ禍の影響で2021年度と2022年度の新卒採用を見送っていたという点です。航空需要の激減に伴う経営状況の悪化が背景にあったのでしょう。そのため、2023年度入社の募集では卒業後2年以内の既卒者も対象とするという特別措置が取られました。
コロナ禍は入社式のような企業の重要な儀式にも大きな変化をもたらしましたが、JALはオンライン形式を導入することで伝統を途切れさせることなく継続させていたことがわかります。また、徐々に従来の形式に戻していく過程は、航空需要の回復とも歩調を合わせていたようです。
このような危機への対応と伝統の維持のバランスは、JALのような大企業の危機管理能力と柔軟性を示す好例と言えるかもしれません。
JALが採用再開した2023年からは格納庫での大規模入社式が復活した
JALグループは新型コロナウイルスの影響で2021年度と2022年度の新卒採用を見送っていましたが、2023年度から採用を再開し、それに伴い格納庫での大規模な入社式も本格的に復活しました。調査によると、2023年4月3日に開催された入社式にはグループ37社から1985人もの新入社員が参加しました。
この入社式は、全職種が参加する大規模な形式は2019年以来の4年ぶりとなりました。会場となった羽田空港の格納庫にはエアバスA350-900型機の特別塗装機「挑戦のレッド」(機体記号:JA01XJ)が配置され、新入社員の門出を象徴的に彩りました。
赤坂祐二社長(当時)は式辞で「長く辛い時代もようやく終焉を迎え、かつての日常が戻りつつある。皆さんを新しい仲間として迎えることができ、嬉しくすがすがしい思いだ」と語り、コロナ禍からの回復と新たな人材の加入を喜ぶ気持ちを表明しました。また「命の尊さや人の絆の大切さを実体験してきた皆さんは我が国の希望であり、黄金世代。新しい時代の先駆者として、社会を変え未来をつくるリーダーとして存分に力を発揮してほしい」と新入社員にエールを送りました。
興味深いのは、この入社式でマイクのトラブルが発生したにもかかわらず、赤坂社長がそのまま地声を張り上げてスピーチを続行したという点です。このエピソードは、予期せぬ状況にも臨機応変に対応する姿勢を示し、新入社員にとって印象的な場面になったでしょう。
2023年の入社式復活は、航空業界の回復と再成長への期待を象徴するものでした。特に客室乗務員の採用は3年ぶりに再開され、業界全体が新たなフェーズに入りつつあることを示しています。
格納庫での大規模入社式の復活は、JALグループにとって単なる儀式の再開以上の意味を持っていたのかもしれません。それは、コロナ禍という困難な時期を乗り越え、再び成長への道を歩み始めたという企業としての自信と決意の表れだったと言えるでしょう。
鳥取三津子社長は初の女性社長として2024年の入社式を主宰した

2024年4月1日のJALグループ入社式は、同日付で就任した鳥取三津子新社長のもとで行われました。調査によると、鳥取社長は日本の航空大手で初めての女性社長であり、さらに客室乗務員(CA)出身者としても初めての社長という、二重の意味で画期的な人事となりました。
鳥取社長は入社式での訓示で「JALグループのお仕事は、どの業務に関わっていましても必ず安全につながっております。決して忘れないでください」と強調し、安全を第一とする企業文化の重要性を説きました。また「いま行動しようとしていることは、お客様にとっての価値は何なのかを立ち止まって考えてほしい。進むべき道に迷いが出た時、見失いそうになった時は、お客様のことを一番に考えて、お客様に何がベストかを考えれば、必ず答えは見つかると思う」とお客様視点での判断の大切さも訴えました。
入社式後の取材に対して鳥取社長は「たくさんの社員がいますので、将来を自分が背負うんだという気持ちで責任感をひしひしと感じて一生懸命、誠心誠意、覚悟を持ってやっていきたいと思います」と新社長としての決意を語っています。
鳥取社長の就任と入社式主宰は、JALの多様性推進の象徴とも言えるでしょう。客室乗務員から社長に登りつめたキャリアパスは、現場経験を重視する企業文化を示すとともに、性別や職種にかかわらず能力と実績に基づく登用が行われていることを示しています。
特に2024年の入社式は、年明け早々に能登半島地震とJAL516便の事故という二つの困難に直面したJALにとって、新たな出発点としての意味合いがありました。そうした中での女性社長の就任と、過去最多となる2600人の新入社員の入社は、JALグループの着実な回復と将来への希望を象徴する出来事だったと言えるでしょう。
女性社長による入社式は、航空業界における性別の多様性が進んでいることを示す一方、伝統的な紙飛行機セレモニーなどの継承も行われており、革新と伝統のバランスが取れた式典となったようです。
JAL入社式とANA入社式の類似点と相違点
日本の航空業界を代表する二大キャリア、JALとANAの入社式には、いくつかの類似点と相違点があります。調査の結果、両社とも羽田空港の格納庫で大規模な入社式を行うという共通点がある一方で、細部には違いが見られることがわかりました。
まず類似点として、両社とも2024年4月1日に羽田空港の格納庫で入社式を開催しています。JALが約2600人、ANAが2848人と、どちらも2000人を超える大規模な入社式となっていました。また、コロナ禍で採用を抑制していた時期があり、2024年は航空需要の回復に伴って採用人数が増加しているという点も共通しています。
特に注目すべきは、ANAグループでも約400人が新型コロナの影響で4年ぶりの採用となった客室乗務員だったという点です。これはJALが2023年に客室乗務員の採用を3年ぶりに再開したのと同様の動きであり、両社がコロナ禍という危機に対して似た対応を取っていたことがわかります。
一方で、伝統的なセレモニーには違いがあるようです。JALが「紙飛行機セレモニー」を重視しているのに対し、ANAの入社式の特徴的な演出については詳細が少ないため、独自の伝統があるのかもしれません。
また、2024年のJAL入社式では鳥取三津子社長(初の女性社長)が新入社員にメッセージを送ったのに対し、ANAでは具体的にどの経営層が式辞を述べたかの情報はありませんでした。
入社式の規模については、2023年の情報によるとJALがグループ37社1985人だったのに対し、ANAもグループ37社1066人と報告されています。2024年はJALがグループ40社約2600人、ANAがグループ37社2848人と、どちらも前年から大幅に増加していることがわかります。
両社の入社式は、それぞれの企業文化や伝統を反映しつつも、航空大手としての格式や安全への誓いという点では共通する部分が多いようです。また、近年のコロナ禍からの回復過程においても、似たタイミングで採用や入社式のスタイルを変化させてきた歴史を持っています。
10月にも中途採用者向けの下期入社式が開催されることがある
JALグループでは、毎年4月に実施される上期入社式だけでなく、10月頃に下期入社式が開催されることがあります。調査によると、2022年10月4日には下期入社式が羽田空港の格納庫で行われ、赤坂祐二社長(当時)が「新しい価値生み出して」と新入社員を激励したことが報じられています。
また、2017年10月3日にも下期入社式が開催され、当時の植木義晴社長が「つぶれたのではなく、つぶした会社」と経営破綻の教訓を新入社員に語りかけていました。このように、下期入社式も上期と同様に格納庫で行われ、社長による訓示や恒例の紙飛行機セレモニーなどが実施されているようです。
下期入社式は主に中途採用者や特定の職種の採用者を対象としたものと考えられますが、上期入社式に比べると規模は小さい傾向にあるようです。ただし、その内容や伝統行事は上期とほぼ同じ形式で行われており、JALグループの一員としての誇りや安全意識を高める重要な機会となっていることがうかがえます。
特に注目すべきは、下期入社式でも社長が直接訓示を行い、企業理念や価値観を伝える場となっていることです。これは中途採用者に対しても新卒採用者と同様に企業文化の浸透を図っているということであり、JALグループが人材の出自に関わらず一貫した価値観の共有を重視していることを示しています。
ただし、下期入社式の開催はコロナ禍以降の状況や採用計画によって変動する可能性があります。2023年以降の下期入社式の開催有無については明確な情報がないため、現在も同様の形式で継続されているかは定かではありません。
下期入社式の存在は、JALグループが年間を通じて継続的に人材を採用し、その都度適切なオリエンテーションと企業文化の浸透を図っていることを示しています。新入社員にとっては入社時期に関わらず、格納庫という特別な場所で仲間とともに新たなスタートを切る機会が提供されているのです。
グループ会社社員も含めた一体感のある入社式が特徴である
JALの入社式の大きな特徴の一つが、JAL本体だけでなくグループ会社の新入社員も含めた「JALグループ合同入社式」として開催されることです。調査の結果、2024年の入社式にはグループ40社から約2600人、2023年にはグループ37社から1985人が参加していたことがわかりました。
このグループ全体での合同入社式には、統一感のあるグループ文化を醸成する狙いがあると考えられます。例えば、2024年の入社式で新入社員代表を務めたのは、JAL本体ではなくJALグランドサービス(JGS)のキンチョウレウィンさんでした。また、2023年の入社式では沖縄を拠点とする日本トランスオーシャン航空(JTA)の客室乗務員、上間涼音さんが代表として宣誓しています。
さらに、入社式に出席した新入社員の中には、JAL本体だけでなく日本エアコミューター(JAC)やJALグランドサービス(JGS)など、様々なグループ会社の社員が含まれていました。2023年には「JAC客室乗務員としては9年ぶりの入社」という報道もあり、グループ各社の採用状況の変化も入社式に反映されていたようです。
グループ会社を含めた合同入社式を行うことで、所属会社は異なっても「JALグループの一員」という意識を新入社員に持たせる効果があるでしょう。また、安全文化や顧客第一の姿勢といったJALグループの根幹となる価値観を、グループ全体で共有する機会にもなっています。
鳥取社長が2024年の入社式で「未来のために、そして未来へ向けて一緒に働く皆さんと一丸となり、必ずこの会社が将来も必要とされる会社であることを胸に刻みながら一緒に進んでいきたい」と述べたように、JALグループとしての一体感や結束力を高める重要な場として入社式が位置づけられていることがわかります。
このようなグループ全体での取り組みは、「世界一お客さまに選ばれ、愛される航空会社」というJALのビジョン達成に向けた基盤づくりとしても機能しているのかもしれません。

まとめ:日本航空入社式の伝統と進化、これからの展望
最後に記事のポイントをまとめます。
- JAL入社式は通常、羽田空港の格納庫という特別な場所で開催される
- 紙飛行機セレモニーは入社式の最も象徴的な伝統行事
- 2024年の入社式は過去最多の2600人が参加する盛大なものだった
- 社長による訓示では常に「安全」と「お客様第一」が強調される
- 大谷翔平選手など著名人からのビデオメッセージが送られることがある
- 新入社員代表による宣誓は時代を映す感動的なスピーチとなる
- コロナ禍には2020年にオンライン開催という変化があった
- JALは2021-2022年度の採用を見送り、2023年から再開した
- 2024年からは初の女性社長である鳥取三津子社長が入社式を主宰
- JALとANA両社とも格納庫での大規模入社式を行う共通点がある
- 10月頃には中途採用者向けの下期入社式が開催されることもある
- JAL本体だけでなくグループ会社を含めた合同入社式が特徴
- 入社式は単なる儀式を超え、企業文化や価値観を伝える重要な場となっている
- 近年は航空需要の回復とともに入社式も従来の姿を取り戻しつつある